首都レジーナの住宅街。

そこには大小たくさんの家々が建ち並び、そこに住むたくさんの人々が行き交っていた。

そんな住宅街に、ひときわ大きな屋敷があった。

家の敷地は1000坪にも達し、家の周りには大きな庭、そして噴水がきれいな水を流している。

その家と庭の周りを、大きな塀が囲み、家の入り口と塀にある入り口にそれぞれ二人ずつ、警備員がそれぞれの武器を持って立っていた。

その屋敷の一室。

その部屋は、学校の体育館くらいの広さがあった。

部屋には扉がふたつ。ひとつは廊下に出るための扉、もうひとつは隣の部屋に行くための扉。

そしてその床には隙間なく真っ赤なふかふかの絨毯が敷かれ、歩く者の足音を掻き消す。

部屋にある窓は、壁一面に広がり外から射す暖かい光を部屋全体に受け入れていた。

そんな部屋に一人の男がいた。

男の年齢は三十歳前後。ショートカットの茶色の髪と、それより少し濃い色の瞳を持っている。

服装は紺のスーツに黒の革靴という格好だった。

その男はその部屋に置かれていた三人掛けの椅子に腰掛け、前屈みの姿勢で両手を組み、目を閉じていた。何かに必死で祈るように。

男はしばらくそのままの体勢だったが、隣の部屋から微かに聞こえてきた誰かの泣き声を聞いて、すぐに顔を上げた。

その泣き声は、赤ん坊のもののようだった。

男は顔を上げた後、じっとその泣き声が聞こえていた隣の部屋の扉を見つめる。

するとすぐに、一人の女性が出てきた。

その女性は服装から見るとどうやらこの屋敷のメイドのようだ。女性はとても嬉しそうな表情で男のところに歩いてくる。

そして

「旦那様。奥様が無事ご出産しました!元気な男の子です!」

泣きながら言った。

その言葉を聞いた男も、表情を喜びを含んだものに変え、メイドに訊き返す。

「本当か!?」

「はい!もう会えますので、奥様と坊ちゃまに会ってあげてください」

「ああ」

男はメイドの言葉にそう答えると、足早に隣の部屋へ向かう。そしてゆっくりと扉を開けた。

その部屋は、先ほど男がいた部屋の半分ほどの広さがある部屋だった。

そしてその部屋の中心にひとつのベッドがあり、そのベッドに一人の女性が横になっている。

その女性は、年齢は二十歳代後半くらい。

横になっているため長さははっきりとはわからないが、ウェーブのかかったとても長い髪を持っていた。その色は銀。

そしてその女性の周りに、数人の助産婦がいた。その助産婦達のうちの一人が、男に向かって歩いてくる。

その手には白い布を抱えていた。

「旦那様。おめでとうございます。奥様が無事にご出産なされました。男の子です。さあ、抱いてあげてください」

助産婦はそう言って男に白い布を手渡す。その中には小さな赤ん坊が眠っていた。

男はそれを受け取り、しばらくじっと見つめる。そしてそれを抱えたままベッドの方に向かう。

それを見た助産婦達は、左右に分かれて男のために道を作った。

「レイチェル」

ベッドの横まで来ると、男が女性に優しい口調で話しかける。

それを聞いた女性は閉じていた瞼をゆっくりと開いた。その瞼の下に現れた瞳の色は髪と同じ銀色。

「あなた・・・」

男の顔を見て安心したのか、女性は少し笑みを浮かべる。

それを見て、男は女性の手を優しく握った。

「レイチェル、よくやった。お前はすごいよ」

そう言われた女性はまたさらに笑みを浮かべ、男に尋ねる。

「あなた、この子の名前は決まっているの?あなたが決めた名前を、この子につけましょう」

それを聞いた男は、大きく首を縦に振る。

「ああ、もちろん決まっているよ。男の子が生まれたら絶対この名前にしようと思っていた。

この子の名前は・・・グレン。グレン・フォース。私の最愛の息子だ!」

 

 

俺はレジーナの有名財閥、フォース家に一人息子として生まれた。

そのため小さい頃から有名な家庭教師から教育を受け、バイオリンやピアノなどの習い事もさせられた。

でも、俺は暇さえあれば外に出て庭で遊んでいた。

それと家族での食事だけが毎日の楽しみだった。

だから、家を出て軍人になるまで身の回りのことはまったくしたことがなかったし、自分の身を自分で守るというのも軍人になってから身につけた。

それまでは自分でやらなくても百人を超えるメイドや執事とそれ以上いたガードマン達がやってくれたからだ。

でもあの日、俺は自分の非力さを初めて知り、強くならなければならないと・・・思った。

 

 

レジーナの住宅街に建つ屋敷の庭にある大きな木、その木にある一番太い枝に一人の少年が座っていた。

その少年の名前はグレン・フォース。年齢は十歳。

ショートカットの銀髪にそれと同じ瞳を持っている。

そして服装は灰色のブレザーに短パン、靴は黒の革靴という格好だった。

グレンは枝に腰掛けたまま上を見る。

その日はとても天気がよかった。空は澄み渡り、雲もまったくと言っていいほどない。

グレンはそのままじっと空を見ていた。

その間は心地よい風がグレンの頬を優しく撫で、葉と葉が擦れあう木のざわめきが聞こえていた。

しばらくそうしていたが

「グレン様ー、どこですかー?」

という声が聞こえた。

グレンはその声に反応して下を向く。

すると下には必死で自分を探すメイドがいた。

グレンはそのメイドが誰かを確認してから、その名前を呼ぶ。

「エルファ。僕はここにいるよ」

そのグレンの声を聞いたエルファと呼ばれた女性が木の上を見る。

この女性はエルファ・メニー。年齢は二十歳前後。金色の髪をポニーテールにしていて、瞳の色は茶色。

穏やかな表情をしたとても優しそうな女性だった。

エルファはグレンの姿を確認すると、少し微笑んで言う。

「グレン様、お父様とお母様がお呼びですよ」

「父さんと母さんが?」

「はい。お父様とお母様は自室にいらっしゃいますので、すぐに行ってください」

「わかった」

グレンはエルファにそう答えると、すぐに木の枝から飛び降りる。そしてエルファの方を見た。

「伝えてくれてありがとう、エルファ。じゃあね」

「お気をつけて」

グレンの言葉にエルファはそう言って頭を下げる。

そのエルファの礼を背中に、グレンは家の中に入って行った。

 

グレンは広い廊下を一人出歩いていく。

途中ですれちがったメイドたちに挨拶をしながら、目的地に向かって歩いて行った。

しばらくそのまま歩いて、グレンは足を止めた。そのグレンの前には大きな両開きの扉がある。

グレンはその扉をノックして、部屋に入った。

その部屋は赤をベースにした音楽ホールに使えそうなほど広い部屋だった。

赤い絨毯が床に隙間なく敷かれ、部屋の隅にあるベッドは二人用だが、三人が余裕で寝られそうなほど大きい。

そのベッドのふとんの色も、ベッドを囲むレースのカーテンも赤だった。

他にもテーブルやクローゼットなどがあったが、これらの色は赤以外の色だった。

そしてその部屋に二人の人物。

一人は男、年齢は四十歳前後。

名前はジョージ・フォース。ショートカットの茶色の髪と、それより少し濃い色の瞳を持っている。

服装は紺のスーツに黒い革靴という格好だ。

もう一人は女性。

名前はレイチェル・フォース。年齢は三十歳代後半。膝に届きそうなほどの長いウェーブのかかった銀髪にそれと同じ色の瞳を持っている。

服装は床に届くほどの長さの赤いドレスだった。

グレンはゆっくりと二人のところに歩いていく。そしてその前で止まった。

「何か用ですか?父さん」

グレンがいつも通りの表情でジョージに問い掛ける。

それにジョージは笑顔で答えた。

「ああ。実はな、グレン。父さん今週末に休暇がとれたんだ。

だから家族でどこかに出かけようと思うんだが、どうだい?」

そのジョージの言葉を聞いた瞬間、グレンの表情が一気に喜びを含んだものに変わった。

「本当ですか!?」

「ああ、本当だ。それで、どこに行きたい?」

「僕、最近東区画に出来た遊園地に行きたいです!」

「遊園地か・・・いいじゃないか。じゃあ、今週末は遊園地に行こうか」

「やったー!ありがとうございます、父さん!」

グレンは家族で出かけられることが本当に嬉しいというようにはしゃいで部屋から出て行く。

それを、ジョージとレイチェルは幸せそうに見ていた。

 

こうして俺はその週の週末、家族で遊園地に出かけた。

俺はこの日が思い出に残る楽しい日になることを願っていた。

そして確かにこの日のことは記憶には残っている。

しかし思い出には残したくない・・・消せるものならそうしてしまいたい忌々しい記憶・・・そんな日になってしまった。

 

その週の週末、屋敷の前には黒塗りの大きな車が停まっていた。

そのそばには四人の人物。三人はフォース一家でもう一人は五十歳ほどの執事だった。

この日、ジョージとグレンはいつもと同じ服装だったが、レイチェルだけは白のロングドレスを着ていた。

執事は車に歩いていき、後部座席のドアをゆっくりと開ける。

それを見たジョージは執事に話し掛けた。

「じゃあ、行って来る。留守は頼んだぞ」

「はい、お任せください。では、存分に休日を楽しんできてください」

こうしてグレンたちは車に乗り込み、遊園地に向かった。

 

「父さん、本当にありがとうございます」

車が走り始めて数分が経ったとき、グレンが口を開く。

それを聞いたジョージはなにに対してそう言われたのかが分からなく、グレンに訊き返す。

「何がありがとうなんだい、グレン?」

それに対してグレンは少し遠慮がちに答えた。

「だって僕、父さんが本当に遊園地に連れて行ってくれると思ってなかったから・・・

ほら、今まで休暇がとれたからどこかに行こうって言っててもその日に急に仕事が入るって事が多かったじゃないですか。

だから今回もそうなるんじゃないかって少し不安だったんです」

そのグレンの言葉を聞いたジョージは少し笑みを作った。

「そうか。確かにそうだな。

でもな、グレン。今回はそうならないように仕事が入っても電話をするなと部下に言っておいたんだ」

それに今度はレイチェルも笑顔を作る。

「そうよ、グレン。それにこの日のために、お父さんは毎日のように残業をしていたんだから」

それを聞いたグレンも満面の笑みを浮かべた。そして

「うん。お疲れ様でした・・・父さん。あと、ありがとうございます」

再びお礼を言う。

そうして走りつづけること数十分。車は東区画に入り、人気がない道に入る。

これから行く遊園地は広大な敷地にするために、なるべく人がいないところを選んだためこのように人気のない道を通らなければならないのだ。

「あなた、この道大丈夫かしら。何か出そうだわ」

レイチェルが不安そうに言う。

それにジョージは軽く答えた。

「大丈夫さ。こんなところ、何も出やしないよ」

しかし、すぐに車が急ブレーキをかける。

「うわっ!」

「グレン!」

急ブレーキのせいで運転席側と後部座席側を区切る壁にぶつかりそうになったグレンを、ジョージが支える。そして前を見た。

「いったい何があったんだ?」

ジョージはそう呟いて、すぐに運転席側の壁を叩く。

「おい、いったい何があったんだ!?」

その瞬間だった。

勢いよく後部座席側のドアが開き、そこから一人の男が入ってくる。

「お前、ジョージ・フォースだな」

「な・・・何だお前は!」

ジョージは男にそう問うが、男はそれに答えることなく拳銃を取り出し、発砲する。

ドーンという音が響き渡った。その瞬間、

「きゃあっ!」

レイチェルの叫び声が聞こえた。

それを聞いて、グレンはレイチェルのほうを見る。

すると、レイチェルの右腕から血が流れていた。その血がレイチェルの真っ白なドレスを赤く汚す。

「母さん!」

グレンはレイチェルに手を伸ばす。

しかしレイチェルは反応を返さない。どうやら気を失っているようだ。

その様子を見ていたジョージが男を睨む。

「貴様、何をする!」

「うるせぇよ。こっちが訊いてんだ。お前はジョージ・フォースか?」

「だったらなんだ!」

そのジョージの言葉を聞いた男は、いやらしい笑みを浮かべた。

「実はある人物からあんたたちの休日を邪魔してくるように言われてね。

ついでだからあんたも殺してやろうと思ったんだが・・・」

男はそこで言葉を切り、必死に母に呼びかけるグレンに目線を移す。

そしていきなり車の中に入ってきて、グレンの細い腕を掴み自分の方に引っ張り外に出した。

「あっ?」

「グレン!」

ジョージは男に引っ張られるグレンの手を掴もうとしたが、間に合わなかった。

グレンはそのまま男に抱きかかえられる。

それを追ってジョージは車の外から出たが、その瞬間

「ぐああああああっ」

ジョージが叫び声をあげた。その右脚には小さな穴が開いている。

「父さん!」

そのジョージを見たグレンは駆け寄ろうとしたが、男にがっちりと抑えられて身動きができない。

そんなグレンとジョージを無視するように、男は茂みの方を見ていた。

するとしばらくしてもう一人男が出てきた。その男の手にも、拳銃が握られている。

「おい、何やってんだお前?まだこのおっさん生きてるじゃねーか」

茂みから出てきた男が言う。

それに対して、先ほどからグレンを抱えている男が言った。

「いや、このぼうずが女みてーな顔してるからよ。

殺す前にこのおっさんに息子が犯されてるとこ見せてやろーと思ってな」

「お前、またそれかよ。ヤるのはいいが、とっとと済ませろよ」

「なっ」

それを聞いたジョージが驚愕の表情を見せる。そして叫んだ。

「お前、私の息子に何をしようとしている!

私を殺すのはかまわんが、息子には・・・息子と妻には手を出すな!」

しかし、男はそれを無視してグレンを地面に仰向けに倒す。そしてその上に覆い被さるような体勢をとった。

「・・・?」

グレンはその男の行動の意味がわからず、ただ身体を震わせて怯えていた。

そのグレンに男は軽く言い放った。

「まあ、すぐおわっからよ。良い声で鳴いてくれよ」

そしてグレンのブレザーを脱がせ、シャツのボタンを引きちぎる。

「!!」

男のいきなりの行動に、グレンは驚いた。だが、叫びたくても恐怖で声が出ない。

「お前、ずいぶんと大人しいな。まあその方が俺はいいがな」

そう言って男は、今度はグレンの胸の突起に唇をつける。

グレンはその行為に新たな恐怖を覚える。背筋がゾクゾクして仕方ない。

気持ち悪い。

男はそうしてしばらくグレンの反応を楽しんでいたが

「おい、早くしろよ。軍の奴らが来たらどうするんだよ」

という仲間の声を聞いて動きを止めた。

「ったく、しゃーねーなー。まだ挿れてないんだぞ。

・・・しょーがねー、まだ慣らしてないが挿れちまうか」

そう言って男は自分のものをグレンのまだ解かれていない蕾にあてがう。

そしてそのまま少しずつ押し込んだ。その瞬間

「!!うあああああっ」

今まで一言も口を開かなかったグレンが、激しい痛みに耐えられず声をあげる。

「グレン!」

ジョージは先ほどからグレンを助けようとしているが、脚が動かないため動くこともままならない。

そんなジョージを無視して男はそのままグレンに自分を入れていくが、急に聞こえたサイレンの音で再び動きを止めた。

「やべぇ、軍が来た!逃げるぞ!」

今まで男の行為を見ていた仲間の男が叫ぶ。

それに対して男はチッと舌打ちして仕方なく挿入するのをやめ、グレンから自分のものを引き抜く。

その瞬間、グレンの身体がビクンと跳ねた。

しかしそんなことはお構いなしで、男達はその場から逃げていった。

その様子をグレンは朦朧とした意識の中で見ていたが、すぐに目の前が真っ暗になった。

 

俺が目覚めたのはそれから五時間ほどたった後だった。

軍が来たのは、男達が逃げてから十分ほど後だったらしい。

軍が来てすぐ、俺と父さんたちは病院に運ばれた。

幸い父さんも母さんも怪我はしたが命に別状はなかった。

しかし、父さんも母さんも手術をした上に、それぞれ全治三週間と一ヶ月という診断を受けた。

俺はこの日、初めて己の非力さを知った。そしてそれと同時に、ある決意をした。

 

あの出来事から三ヵ月後、父さんも母さんも病院を退院して普通の生活に戻っていた。そして俺もいつも通りの生活をしていた。

俺はこの日、あることを話すために父さんと母さんの部屋に行った。

 

「どうしたんだ?グレン」

ジョージがグレンにそう訊く。

それにグレンはゆっくりと答えた。

「実は、父さんと母さんに聞いてほしいことがあります」

「まあ、なあに?」

レイチェルが優しく訊く。それに対してグレンは真剣な表情で話し始めた。

「父さん、母さん、僕・・・軍人になります!」

それを聞いた瞬間、ジョージとレイチェルはほぼ同時に口を開いた。

「なんだと!?」

「いったいどうしたのグレン!?」

その二人の反応を予測していたかのように、グレンは冷静に説明を始めた。

「僕、軍人になります。

そして、自分の身を自分で守れるように、母さんや父さんや、弱い人たちをしっかりと守れるくらい強くなりたいです!」

「・・・あのことを気にしているのか?グレン」

グレンの言葉を聞いたジョージが問いかける。それにグレンは真剣に答える。

「もちろんあのことも気にしてるけど、それだけじゃないんです。

あのことで僕は自分の非力さを知りました。

もう誰も守ることが出来ない弱い自分は嫌なんです。

自分を変えたい、強くなりたい。だから軍人になりたいんです」

「でもグレン、強くなりたいなら別に軍人にならなくても・・・もっと他の方法もたくさんあるでしょう?」

グレンの言葉にレイチェルが言う。しかし、グレンは首を横に振った。

「いいえ、中途半端な強さはいらないんです。

確実に自分を守り、弱い人を守れる強さが欲しい・・・

そのためには、軍人になるのが一番だと思いました」

その言葉を聞いて、今度はジョージが口を開いた。

「グレン、お前の気持ちはよくわかる。

しかし、大切な一人息子をいつ死ぬか分からない軍にやると思うか?

私は許さないぞ」

それを聞いたグレンは、少し溜息をついた。

「そうですか・・・なら、この家を出るしかありませんね」

「グレン、なにを言っているの?」

「父さん、母さん、俺はどうしても軍人になりたい。

だからただいまをもってこの家を出させていただきます!」

グレンが力強く言う。それを見たジョージは脱力して言った。

「・・・そうか。なら私も何も言うまい。

だが、もうお前を息子とは思わん。どこへでも好きなところに行ってしまえ。

そして二度と私の前に現れるな」

それを聞いたグレンは、何も言わずに礼をして部屋から出て行った。

 

こうして俺は家を出た。両親に嘘をついて。

いや、嘘と言えばこれも嘘になる。軍人になりたい理由に、確かに父さんと母さんに話した理由も入っていた。

でも、一番の理由は・・・俺たちを襲った犯人を捕まえることだった。

そしてそれを言えば、父さんも母さんもさらに軍に入るのを反対する。だから俺はあえてそのことは言わなかった。

俺は家を出た後、軍人になった。十一歳の誕生日に、入隊試験を受けて・・・

しかし犯人はいまだに捕まっていない。

そして今も俺は軍人として生きている。自分の・・・目的のために。