鐘の音がやみ、

カウントダウンがゼロになり、

歓喜の声が響き渡る。

 

「おめでとさん!」

今年もノリは同じらしい。

違うといえば衣装くらいか。

「明けましておめでとうございます、カスケードさん」

「おめでとーございまーす!」

「リアちゃんもラディも似合ってるな、着物」

「カスケードさんこそ、きまってますよ」

元旦くらいは和服をお披露目。

「こういうとき面白いよな、文化が混在してるって」

「そうですねー。作者もめちゃくちゃなことやりやすいみたいですし」

「ラディアちゃん、その話はタブーみたいよ」

初詣に行くために集まる約束だが、まだ人がいない。

どうせ一部は遅刻だろうから、気長に待つことにする。

「だからお前は重いもん持つなって言ってんだろ、馬鹿」

「馬鹿って言わないでよ〜。大丈夫だよ、左手だから…」

定番の会話が聞こえてくる。時間通りにくる者達だ。

「アル!黒すけ!」

「あ、大佐!おめでとうございます」

「相変わらずのテンションだな」

「リーガル少佐、明けましておめでとうございます」

「マ、マクラミーさんっ!お、おめでとうございます!」

アルベルトは着物姿のリアを見て挙動不審に陥り、ブラックはそれに溜息をつく。

彼等は和装ではない。着替えるのが面倒だし、アルベルトに至っては困難だからだ。

「お前はすごいカッコなんだな」

「似合うか?」

「しらねーよ」

これで五人。全員揃うまでにはかなりの時間がかかりそうだ。

「遅れてすいません」

あまり時間を空けずに六人目の到着。

こちらも普段着。

「よぉ、グレン。おめでとさん。…カイは?」

「おめでとうございます。あいつは今来ますよ」

答えた所でリアとラディアが近付いてきて、声をかけた。

「グレンさん、おめでとうございます」

「おめでとうございまーす」

「あぁ、おめでとう。…動きにくそうだな」

「大丈夫です。…あ、カイ君来たみたい」

リアの言う通り、後方には同じく普段着のカイがいた。

「おめでとうございまーす。さっき新年初射撃されちゃって…」

「何したんだよバカイ」

「まっくろくろすけに説明するようなことじゃない」

どうやら新年初火花。呆れて見守ることしかできない。

「わー、みんなおめでとう!」

聞きなれた声に、その場にいた全員が反応する。

しかし、

「…あれ?」

そこにいたのは振袖の少女。

「…えーっと…」

言葉を失っていると、後方からそのパートナーが袴姿で歩いてきた。

「おめでとうございます」

「よ、アーレイド。…これはハルで良いんだよな?」

カスケードは少女を指して尋ねる。

「そうですよ、ハルです。ハルのじいちゃんが衣装貸してくれて…」

もしかするとスティーナ氏は女の子が欲しかったんじゃないだろうか。

思わずそんな考えをめぐらせてしまうほど、ハルは完璧に女の子だった。

「アーレイドがぷっつんしちゃって大変だったんです」

そりゃそうだ。

「グレンさんも着れば良かったのに」

「誰が着るか」

そうこうしているうちに、今度は大勢の到着だ。

「カスケード、おめでとう」

「ツキ!うわぁ、お前も袴似合うな…」

キルアウェート兄弟とベルドルード兄妹、そしてメリテェアが和装で登場。

おそらく全てツキとフォークの家にあった物だろう。

「今年も宜しくお願いしますわね。」

「うん、宜しく。メリーちゃんもクレインちゃんも綺麗ね」

「リアさんも綺麗です」

「ほんと、リアさんきれー!」

「フォーク君もね。…なんで振袖なのか不思議だけど…」

フォークが振袖姿なのはクライスの希望ではなく、袴だと微妙だったかららしい。

しかし結果的にクライスは

「フォーク最高!ビューティホー!」

かなり喜んでいるようだ。

「…今年もバカ兄、か」

「クレイン、何だよその言い方!」

兄妹漫才は今年も健在。

「新年早々元気ですね」

「あ、クリスさん」

「お前も普段着か」

「重くて動きにくい上に面倒ですから」

さりげなく和装組に向かって毒を吐くクリス。

確かに毒づかないクリスはクリスと言えないのだが。

「…後は不良と保護者か?」

「どうせディアが寝坊したか、アクトが外に出るの渋ってるんだろ」

ツキの読みは当たっていて、さらにもう一つ要素が追加されていた。

漸く到着したディアの後ろで、振袖美女が恨めしそうにしている。

「悪ぃな、遅れて」

「あぁ、それはいつものことだからいいんだ。

でもお前の後ろはいつもと違うよな」

「バツゲームだからな」

ディアの意地悪そうな笑みと、俯いたまま前に押し出されるアクトの振袖姿。

ディアにとっては幸先が良く、アクトにとっては最悪の新年だ。

「綺麗じゃん、アクト」

「カスケードさん、おれにケンカ売ってんの?」

かけた言葉も逆効果。

「何のバツゲームですか?」

「ダーツ」

「嘘ぉ?!」

ダーツはアクトの得意分野のはずだ。メリテェアとアーレイドがたまに勝てるくらいなのに、ディアが勝てるとは信じがたい。

「ディアさんずるしたんじゃ…?」

「しねぇよ」

とにかくその結果がこれだ。

衣装はアクトの従姉であるマーシャが面白がって送ったらしい。

「もうやだよ、おれ…」

「元気出してください。出店の射的でねぁーとってあげますから」

「本当?約束だからな、グレン」

「…アーレイドが耳塞いで青くなってるよー?」

 

硬貨のぶつかる音と、大きな鈴の音。

あまりに混むので待ち合わせ場所を決めてバラバラに行動する。

「…っと、やっと着いた」

カスケードとツキはメンバー中では参拝一番乗りだった。

他のメンバーはまだ後ろにいる。

「さて、とりあえずお参りだな」

「早く終わらせてフォーク捜さないと…」

「ツキ、お前弟依存だよな」

話しながら硬貨を放り投げ、鈴を鳴らして手を合わせる。

短い時間が、とても長く思える。

「…よし、行くか」

「あぁ。…フォークどこだーっ!

「待てよ!人込みうろうろしたって簡単に見つからないだろ!」

新年早々疾走する兄。

そしてこっちは、

「あの馬鹿どこ行きやがった…っ!

勝手に行くなってあれだけ言っただろーが!」

新年早々疾走するブラック。

アルベルトはというと人にのまれて流されて。

「…良かった、麻酔かけてきて」

右手の感覚がないだけマシなようだ。

人込みを避けるために出店に行っているメンバーは、

「あれがいい」

「あぁ?アクト、お前さっきからねぁーばっかり指してんじゃねぇか」

「ディアが取ってくれないならグレンに頼むからいい」

「どんどんグレンさんに頼んじゃってください!ねぁー抱えてるグレンさん可愛いんで!」

「カイ、今年二回目が欲しいのか?」

「ちょ…っ射的用のは人に向けちゃ駄目ですよ!」

ひたすら()ねぁーゲットにいそしんでいた。

少し離れて、休憩所では。

「人いっぱいいるねー」

「ハル、疲れてないか?」

「大丈夫。だってアーレイドと一緒だもん」

二人は今年もほのぼのカップル。

そのすぐ傍では、

「クライス君、あれお兄ちゃんたちだよね」

「あー…頭一個分飛び出てるし、多分そうだろうな。

行くか?」

「ううん、待ってる」

こちらもほのぼのとした時間を過ごしていた。

女の子達はおみくじに夢中だ。

「あら、リアさん大吉ですの?」

メリテェアとリアは交換して見せ合う。

「メリーちゃんも大吉だね。…ラディアちゃんは?」

「私は…中吉ですねー」

思う通りに行動すれば運気上昇…ラディアさんがこれ以上思う通りにやったら大変だと思うけど」

「クレインちゃん…。あ、クレインちゃんはどうだった?」

「中吉。でもたいした事書いてないわ」

クレインは早々におみくじを結んでしまう。

リアはラディアのを結んであげてから、自分の方に取りかかった。

「リアさん、恋愛運がよろしかったようですわね」

「そうみたい。…どうなるかな」

所詮はおみくじだが、気になってしまう。

軍人とはいえ普通の女の子なのだから。

クリスはというと一人車の中だ。人込みも冬も嫌いな彼は、ときおり聞こえてくる知り合いの声を楽しむのみ。

「…全く、年が明けても変わりませんね」

当然だと思いながらも、呟いてしまう。

 

何年経っても、きっと変わらない。

何があっても、このメンバーでの思い出は消えない。

確信した、新しい年。

 

今年もよろしく、大切な人。

 

 

Fin

 

 

………………………

 

 

じゃないよ!

 

 

ニア「皆さん、明けましておめでとうございます!今年もKillingHeartを宜しくお願いします。」

クローンニア「ここからは僕たちで進行するよ。途中紛らわしいから色を変えるね。」

ニア「ダブルニアで司会って初めてだし、面白いね!」

クロ「こうして会話すること自体初めてだよ。それじゃ、始めよう。」

(ニアはこの色、クロはこの色です)

 

1.初詣の後は…

ニア「いつもの場所でお雑煮パーティだって。いいなぁ…」

クロ「いつもの場所?」

ニア「ディア君とアクト君の部屋。アクト君の作るご飯、おいしいんだって」

クロ「へぇ…」

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「おいコラ、カスケード!それ俺の餅だろうが!」

「何だよ不良、少しは上司を敬えよ」

「誰が敬うか!」

またやってるよ、カスケードってば…。

騒がしいことこの上ないね。

とりあうほど美味しいんだよ、きっと。いいなぁ、僕も食べたいなぁ…。

「いいかげんにしろ!カスケードさんとディアには餅無し!」

あーあ、怒られてる。

年明けたら罰がパワーアップしたね。

いいなぁ、僕も食べたいなぁ…。

…それしか言えないの?

「グレンさん嬉しそうですね。和食だからですか?」

「…まぁな。」

「グレンさんはお正月しか生きていけませんねー」

「ラディアちゃん、それちょっと言い過ぎ…」

グレン君って和食以外苦手なの?

そうみたいだよ。あ、でもラザニアは食べれるんだって。

…微妙な好みだね。

「お餅は僕の家でついたんだよー。ね、お兄ちゃん」

「結構大変だったんだよな、クライスの手潰しかけたりして…」

「あれはわざとだろ、ツキ!」

お餅はフォーク君の家で作ったんだね。いいなぁ、僕も

それ以上言わないでいいよ。聞き飽きた。

…クローンの僕って結構意地悪だね。

「ブラック、こぼしちゃった…」

「ったく、何やってんだよ馬鹿。だから無理すんなっていったのに…」

「あらあら、早く拭かなければ染みてしまいますわよ」

「お雑煮も替わり持って来ないと…いつも通り騒がしいわね」

通常のアルベルト君ってかなりドジだね。僕と話してたときとは大違い。

ブラック君が食べさせてあげればいいのにね。

メリテェアちゃんやクレインちゃんって年下でしょ?情けないね。

それがアルベルト君の持ち味ってことで許してあげようよ。

「今年は餅を喉に詰まらせる人が何人出るでしょうね」

…クリス君、ずっとそういうこと考えてたのかな…。

まずカスケードで一人かな。

え?!あ、本当だ!魂半分でてるよ!戻さないと!

 

2.それぞれの正月休の過ごし方。

ニア「個人で過ごすお正月は、やっぱり皆でとはちょっと違うみたいだね」

クロ「追っていってみようか」

ニア「どんな風に過ごすのかな〜♪」

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グレン君は家族と過ごすんだって。

「ただいま、父さん、母さん」

「おかえり、グレン…とカイ君」

「明けましておめでとうございます、お義父さん、お義母さん」

カイ君は何でいるの?

お師匠さん以外身寄りが無かったから、今回はグレン君のところにお世話になるんだって。

ちゃっかりお義父さんとか呼んでるけど。

別にいいんじゃない?

良くないみたいだよ。グレン君が銃乱射してるし。

…次行こうか。

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リアちゃんはおばあさんと妹さん達と過ごすみたい。

「おばあちゃん、ただいま!」

「おじゃましまーす!」

ラディアちゃんも来てるんだ。

カイ君と同じ理由みたいだよ。

「お姉ちゃんお帰り!」

「お帰りなさい!」

「ただいま、エレナ、ミーナ」

良かった、妹さん達も元気みたいだね。

うん、僕も少しホッとした。

じゃあ、次行こうか。

そうだね。居続けるとラディアちゃんが暴走しそうだし。

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ハル君はおじいさんとだって。アーレイド君も一緒みたいだね。

なんか身寄りある人と無い人でペアになってるね…。

「おじいちゃん、おめでとーっ!」

「明けましておめでとうございます」

「ハル、お帰り。アーレイド、お前また背が伸びたんじゃないのか?」

「そうなんだよ。ボクこれじゃ追いつけないよぉ…」

ほのぼのした良い家族だね。僕もお父さんとお母さんに会いたくなっちゃったな。

僕は元々家族なんていないから関係ないよ。

何言ってるの。君は僕なんだから、僕と家族!

…なんか違うような気がする。(でも嫌じゃない)

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「やっと静かになりましたね…」

あれ?クリス君は一人?

一人でのんびり過ごしたいみたいだね。冬嫌いだから外出たくもなさそうだし。

温かい部屋で読書かぁ…いいなぁ。

君はさっきから羨ましがってばっかりだね。

え、そう?

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「はい、お兄ちゃん。ちょっと遅れちゃったけどおせち!」

「お、美味そう。いつもありがとうな、フォーク」

ツキ君とフォーク君は兄弟仲良くおせちかぁ。いいなぁ、僕も食べたいなぁ…。

その台詞何度目?まぁいいけどね。

だし巻き卵くらいくれないかなぁ…。

どっちにしても食べれないよ。わかってる?

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ベルドルードさん家は家族四人で過ごしてるみたいだよ。

「クライス、去年貸した本返して」

「去年って一昨日だろ?まだ読んでないよ」

「去年は去年よ。早く返して」

クレインちゃん、取り立て厳しいね。

しっかり者だからね、クレインちゃん。

…なんか違うよ。

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メリテェアちゃんはお姉さんと過ごしてるんだって。

「紅茶が美味しいですわー…」

いつもと変わらないね。で、お姉さんは?

奥にいるみたいだけど…ここからじゃ見えないね。

「さて、そろそろ新年舞踊の準備をしなければなりませんわね」

へぇ、メリテェアちゃん踊るんだ。

リルリア家って高級貴族らしいから、結構大変みたいだよ。

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「母様、ただいま戻りました」

「お帰り、アルベルト。ブラック、アルベルトの荷物持ってきてくれてありがとう」

「別に…たいしたことじゃねーよ」

アルベルト君のお母さん、アルベルト君とそっくりだね。

この兄弟は色はお父さん似だけど顔はそれぞれのお母さん似なんだって。

…やっぱりアルベルト君の手が心配みたいだね。

君が責任感じること無いよ。君は彼がどうなってるのか知らなかったんだし。

でもやっぱり関わってしまったから…。

でももう過ぎたことじゃない。さぁ、次行くよ。ちょっと遠いから頑張ろう。

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寒いなぁ…ノーザリアの冬ってかなり寒いね。

現在の気温マイナス十度だって。アクト君が北の果てにいるみたいなカッコしてる。

「オヤジ、約束どおりきたぜ」

「明けましておめでとうございます、フィリシクラムさん」

「二人ともよく来たな。アクトさんなんてまるでノウジィ灯台(ノーザリア最北端の灯台)まで行くみたいな格好で…」

この寒さだから暖かくしたいのはわかるけど、やっぱりあの格好は異常だよね。

アクト君寒がりだからね。カスケードもしきりに心配してたし。

ディア君は生き生きしてるね。ノーザリアはやっぱり故郷なんだ。

さすが雪男だね!

…違うと思うよ。

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さて、エルニーニャに帰ってきました。ここは軍人墓地です。

カスケード、やっぱりここにいるんだね。

「ニア、明けましておめでとう」

うん、おめでとう!

聞こえないって。

「また新しい年が来たんだな。今年はきっと大変な年になるぞ」

そうだね…なんか一波乱起こりそう。

確実に起こるよ。

「何があるかわからないけどさ…今年も宜しくな」

うん、宜しくね。

ずっと見守ってるから、安心して過ごせばいいよ。

そうだよね!僕ら二人でこれからもカスケードを守っていこう!

…うん。

 

ニア「さて、お正月スペシャルは楽しんでもらえたでしょうか」

クロ「今年がキルハキャラにとっても、作者陣にとっても、」

ニア「もちろん読者の皆さんにとってもいい年でありますように!」

クロ「それじゃ、またね」

 

 

Fin