結局、大総統室で年を越してしまった。
この地位について初めて、一年の始まりを迎えた。年末になってから発生した少しばかり大きなヤマの後始末をしていたら、いつの間にか日付が変わってしまったらしい。
「……まあ、仕方ないか」
呟いて、一人笑ってみる。せめて楽しみをと思い、重厚な資料棚からワインの瓶を取り出して、栓を抜いた。
同じように新年を迎えた人間が他にもいるはずだ。ならば電話越しにではあるが、彼と飲むのもいいだろう。
はたして、その予想は大当たりだった。ダイヤルした先では、こちらと同じように仕事を終えたばかりの国軍トップが、孤独に酒をあおっていた。
「ダイさん、新年おめでとう」
左手に持った受話器に声を預ける。
「おめでとう、レヴィ。まさかとは思うが、お前も職場か?」
返ってくる声は、なるほど、不機嫌ながらもサプライズには喜んでくれているようだ。
「まさかだよ。いやあ大変だね、お互い」
「これがトップの宿命だ、覚えておけ」
対等な立場で、状況を分かちあって。こんなふうに話せるようになるなんて、昔は思っていなかった。
あれから何度も新しい年を迎えて、変わったものと変わらないものがある。今年は特に、それを感じることができた。
地位は変わったが、友情は変わらない。
「今年もよろしく。友人の一人として、国の代表として」
「ああ、また飲みに行こう。今月中に一度、妻と娘に会いに帰るから」
「それ、オレと飲まない方がいいんじゃないの?」
二つの国が繋がって、二人のトップが談笑して、新しい時が刻まれていく。
今年は、どうか平和で。きっとはかない願いだが、望まずにはいられない。